5

メイプルリーフ・ラグ
Maple Leaf Rag





6

エンターテイナー
The Entertainer
スコット・ジョプリン作曲
By Scott Joplin


 奴隷解放以前、ごく少数ではあるが、自由な身分の黒人が存在していた。主人からその働きの褒美として自由を与えられたり、主人の死後に解放されたり、あるいは自分自身を買い取るということもあった。 自由黒人の中には白人のように農場を経営して奴隷を所有するものもいた。

 ラグタイムの王様と呼ばれるスコット・ジョプリン(Scott Joplin, 1868?-1917)は、元奴隷の父と自由黒人(Free negro)の家庭で育った母との間に生まれた。 ドイツ系の移民の音楽教師よりピアノの手ほどきを受け、ミズーリ州セダリアにある黒人のためのジョージ・スミス大学(George R. Smith College for Negros)にて学んだ。
 ラグタイムには様々な形態がある。 原型は先にも述べた通り、行進曲やポルカであり、「ウン・パ、ウン・パ(oompah oompah)」と擬態される低音リズムに基づく。 ほとんどのラグは二拍子で書かれているが、ワルツの形態のものもあり、軽快なケークウォーク、ゆったりとしたスロー・ドラッグ(Slow Drag)もある。早すぎないテンポで、と指定されることが多いが、ゆったり目に「スウィング(Swing)」させて弾くこともあるし、生き生きと速く演奏されることもある。その時の気分や状況で変化すべきなのであろう。
「メイプルリーフ・ラグ」はジョプリンの名を世間に広めた出世作であった。


7

ラグタイム・ナイチンゲール
ジョゼフ・ラム作曲
Ragtime Nightingale
By Joseph Lamb


 三大ラグタイムライターとはスコット・ジョプリン、ジェイムズ・スコット (James Scott, 1885-1938)、そしてジョゼフ・ラム (Joseph Lamb, 1887-1960) を指す。 三人の中ではただ一人の白人であるラムは、没年が1960年ということで、彼自身が演奏した録音も残っており、当時のラグタイムのスタイルを知るには非常に興味深い。 ジョプリンより20年若いということもあり、形態も和声もよりいっそう進化したラグタイムが聞ける。彼自身がこの曲について語っている肉声の録音がある。その中で、「同じくピアニストである姉が購読していた音楽雑誌に掲載されていたショパンの作品の一部からヒントを得た」と言っており、おそらくそれは「革命のエチュードOp.10-12」であろう。




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